COLUMN

 

ニューカレンダー 2022 制作ドキュメント

2022.02.04


ニューカレンダー2022 制作ドキュメント

別冊付録となって4年目を迎えた「ニューカレンダー」。季節の寒暖差を色彩のグラデーションで表現した昨年に続き,今年のテーマは黒。カレンダーの制作にあたり,デザイナー・牧寿次郎と八紘美術,さらに活版印刷を専門とする宮田印刷の協力により,オフセット印刷と活版印刷を掛け合わせることでモノトーンの表現領域の可能性を探るデザインに仕上がった。
ここでは,アイデア396号内に掲載されたカレンダーの制作過程記事をダイジェスト的に振り返っていく。

 

オフセット印刷と活版印刷を掛け合わせたデザイン

黒一色の表現のなかで,オフセットと活版それぞれの特徴を引き出すために,表紙は活版印刷を採用し,活版ならではのインクのかすれや凹凸を活かした。一方の本文デザインでは活版印刷の清刷りをスキャンしてデータ化した文字や罫線をレイアウト。オフセット印刷でありながら,デジタル書体と活字のテクスチャの両方を楽しめる表現を目指した。

 

黒の濃度を調整した本文印刷

オフセットによる本文印刷では,活版印刷特有のインクのかすれやにじみの雰囲気が感じられるよう,活版印刷の清刷りをスキャンしてデータ化し,曜日や六曜などの文字に使用。デジタル書体をつかった数字部分などはあえて2度刷り濃くすることで,活字部分のインクのかすれ具合などがより引き立つように黒の濃度に差をつけた。

 

亜鉛凸版を使った表紙印刷

表紙の活版印刷では,職人の方々と試し刷りを繰り返し,デザインに溶け込むかすれや凹凸表現を探っていった。また,「ニューカレンダー」や「令和」などの文字にも活字のスキャンデータを使用するために、亜鉛凸版を採用。一般的な活版印刷のイメージは一文字ごとの金属活字を組み合わせていく活字組版を使った方法だが,亜鉛凸版は亜鉛版にネガを焼きつけ印字面以外を硝酸で腐食させ凸版をつくるため,版下となる画像から版をつくることができる。そのため,活字組版にくらべ文字の大小などの自由度が高いのも特徴。デジタルとの融合によりユニークな活版印刷が実現した。


カレンダーイメージカット撮影:後藤洋平

*ニューカレンダーの制作プロセスの詳細は396号掲載のドキュメント記事をご覧ください。