Fragments of Graphism
2018.01.15
グラフィズム断章:もうひとつのデザイン史


企画概要

日本のグラフィックデザインは明治以降の近代化および戦後の経済成長を経て大きく発展を遂げてきました。戦前のモダニズム、戦後復興と高度経済成長、情報社会の到来といった動向を通じて日本のグラフィックデザイナーは社会のなかに「デザイン」という領域を確立し、高い品質と独自の美学によって産業や文化の発展に寄与してきました。
 しかし、20世紀末からの本格的なグローバル時代の到来とともに、世界のデザイン潮流は大きく変化しつつあります。デジタルツールが専門家だけの領域であったデザインの実践を広く人々に解放し、また経済的な「先進国」が特権的に享受していたデザインの方法や素材は誰にでも、どこからでもアクセスできるものとなりました。
 このような変化のなかで日本のグラフィックデザインは、今後どのような方向に向かうのでしょうか。あるいはどのような可能性へと開かれているのでしょうか。
 この問題について考えるためには、歴史への意識が不可欠です。日本のグラフィックデザイン文化は、20世紀を通じて西洋のデザイン文化とは異なる独自の美学や方法を発展させてきました。21世紀を迎えた現在、その歩みは豊かな歴史的源泉となっています。
 そこで本展は1953年から半世紀以上にわたって国内外のグラフィックデザインの最前線を追いかけてきた雑誌『アイデア』(誠文堂新光社)をひとつの手がかりに、現代グラフィックの第一線で活躍するデザイナーたちがそれぞれの視点から20世紀日本のグラフィックデザイン史を従来とは違った角度からリサーチする、その過程を提示します(Room  A)。
 また会場には『アイデア』の総バックナンバー閲覧室(Room B)をはじめ、40名を超えるグラフィックデザイナーたちが幅広い年代から選書したデザイン関連書ライブラリ(Room C)を併設。貴重な書物を実際に手に取ることで、これからのデザインを考えるための視点を探ることができます。
 日本の20世紀デザインを単なる回顧から批評的な解釈へと開いていく新しい試みとなります。ここで取り上げるもうひとつのデザイン史を通して、現代、そして未来のグラフィックデザインを共に考える場になればと考えています。


Room A:これまでのグラフィックデザインから考える13の断章

デザイン史をどう記述するかにはさまざまな議論がある。これまでのところ20世紀初頭のモダニズム芸術運動や戦後経済成長のなかで活動してきた主導的デザイナーの実践やそのコミュニティの活動、オリンピックや万博のような社会的イベントのデザイン事例によって構成される言説が、ひとつの「歴史」としてメディアのなかで再生産され、共有されてきた。これらの歴史はより広い地理的、時間的、政治的射程のなかで相対化され再解釈される、ひとつの歴史的リソースとして私たちに開かれてゆくはずだ。本コーナーでは気鋭のグラフィックデザイナー13人がそれぞれの実践的視点から20世紀日本のデザイン史を新たなコンテクストへと接続する、そのリサーチプロセスを進行形で公開する。

参加デザイナー及び展示テーマ
大西隆介 「土着性と根源的グラフィック」
大原大次郎 「曲の線」
加藤賢策 「思想とデザイン(と杉浦康平とデジタルメディアと)」
川名潤 「ブックデザイン 作法と模倣」
菊地敦己 「頼まれていなくてもデザインすること」
髙田唯 「純粋限界グラフィック」
田中義久 「インターメディアとグラフィックデザイン」
田中良治 「90年代のデジタルとグラフィックデザイン」
千原航 「個人と文化と社会とグラフィックデザイン」
長嶋りかこ 「善と悪のデザイン」
中野豪雄 「演算か描写か……戦後日本のダイアグラムと現在」
橋詰宗 「問いをたてる」
前田晃伸 「Design of the New Frontier」


Room B:『アイデア』全アーカイブズ

『アイデア】(誠文堂新光社)は1953(昭和28)年、戦前に刊行されていた広告関連では唯一の全国誌『廣告界』(1926-1941)を継承して創刊された。創刊編集長は『廣告界』の休刊時の編集長であった宮山峻(みややま・たかし)、アートディレクターは大智浩(おおちひろし)、ロゴデザインは亀倉雄策による。同誌は創刊以来60年以上にわたって、歴代の編集長のもと、同時代の海外および日本のグラフィックデザインの状況を紹介し続けてきた(2014年からは季刊)。本ルームではこれまでの全バックナンバーの合本を閲覧用に公開する。

参加作家(インスタレーション)
Gottingham


RoomC:来たるべきグラフィックデザインのための図書室

近代という大きな転換のなかで生み出されたデザインという領域は、その後の産業的な発展のなかで当初の理念性や運動性を失い、方法の体系としてデータベース化されていった。グローバル化や技術革新がもたらす従来の職能領域や価値の枠組みの変化のなか、これまでの「方法としてのグラフィックデザイン」はコンピューティングの世界に回収されてしまうようにもみえる。このなかで「グラフィックデザイン」どのようにアップデートされうるのか。それはどのようにして人間の問題として捉え直せるのか。本コーナーでは独自の活動で注目される47組のデザイナーに、各自の視点からその手がかりと考える書物5点の選出を依頼。そのうちの1冊を閲覧用として集めた全47点の書物を展示公開する。

参加デザイナー
阿部宏史有馬トモユキ飯田将平色部義昭上西祐理岡澤理奈岡本健小熊千佳子尾中俊介尾原史和加瀬透刈谷悠三川村格夫木村稔将木村浩康熊谷彰博後藤哲也近藤聡佐々木俊佐藤亜沙美庄野祐輔新保慶太・新保美沙子(smbetsmb)鈴木哲生須山悠里惣田紗希染谷洋平髙木毬子田中千絵田中雄一郎田部井美奈近田火日輝戸塚泰雄長田年伸仲村健太郎ニコール・シュミット原田祐馬樋口歩藤田裕美牧寿次郎三澤遥水戸部功村上雅士安田昂弘山田和寛山野英之山本晃士ロバート米山菜津子


トークショー・イベント
会期中、トークショー・イベントを開催します。決まり次第、ギャラリーWEBサイトでお知らせします。

出版情報

本展の内容は2018年6月発売の『アイデア』No.382に特集される予定です。

主催:クリエイションギャラリーG8
企画:室賀清徳、後藤哲也、アイデア編集部
構成:橋詰宗、加藤賢策、大原大次郎