IDEA magazine349
2011/11
松田行正デザイン図鑑


特集:松田行正デザイン図鑑

デザイナー,松田行正は80年代半ばよりジャンルをとわず膨大な仕事をこなす一方で,企画・執筆からデザインまでみずから手がける出版レーベル「牛 若丸出版」を主宰。独自の着想にもとづいた数々のダイアグラムや建築・空間のグラフィックでも知られている。本特集では松田の書物とダイアグラムの仕事を 概観し,ひとつの書物や図がつねに別のものへと開かれつながっていく可視・不可視の物語からそのプリンシプルを探求する。
ヨースト・グローテンス:情報の入口

20世紀エディトリアル・オデッセイ
第3回「大伴昌司と内田勝の視覚革命」

赤田祐一×ばるぼら
寄稿・インタビュー:香川眞吾,福田淳,四至本アイ

展覧会と印刷物。
構成・展示写真:立花文穂
文:島袋道浩

今田欣一の書体設計 和字と漢字

特集:松田行正デザイン図鑑

松田行正は,情報を書物に立体化する,図表を構造化するとき,データや論理あるいは美的感覚のみにとらわれることなく,触覚や肌理のような不過視の 要素,記号や色彩の意味論,内容の歴史文脈まで把握した上で,全体としてかたちを導き出す。また,80年代にデザイナーとしての一歩を踏み出した松田は, 杉浦康平に連なるエディトリアル・デザインの潮流から出発しつつも,特定の方法やスタイルにとらわれない同時代的な仕事を続けている。松田は自分のデザイ ンがレファレンスしているものを公言するが,それは「方法の方法」ととらえていることの証拠だろう。本特集の「牛若丸の本」のセクションでは,各書物作り において松田がレファレンスしたものの一例を併置した。現代のデザイナーが主体的な意味で真のデザイナーとなるためのヒントを,松田のヴィジュアル・ラン ゲージは力強く提示している。

牛若丸の本
ダイアグラム
インタビュー
ブックデザイン

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ヨースト・グローテンス:情報の入口

オランダのグラフィックデザイナー,ヨースト・グローテンスは,地理的な情報や数値データを明瞭で目にも楽しいインフォグラフィックスで表したアト ラス(地図帳)を数多くデザインし,その仕事が高く評価されている。世界的にインターネットが普及し,誰でもたやすく情報を入手できる現在,情報をメディ アとして改めて世に送り出すことの意味が問われている。あふれる情報の中から適したものを選び出し,印刷物とデジタルデータのあいだを往き来しながら,受 け手への伝達プロセスも含めた落とし込み方を見極めるには,これまでの編集やデザインの区別を越えた視点が必要だ。グローテンスはデザインの新たな役割を 自覚し,アトラス同様,建築やアート関連の書籍でも,情報を精査して明確に伝える形を追究している。本企画で紹介する彼の仕事や言葉に触れることで,過去 のものとは異質なデザインの「いま」を感じてほしい。

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20世紀エディトリアル・オデッセイ
第3回「大伴昌司と内田勝の視覚革命」

赤田祐一×ばるぼら
寄稿・インタビュー:香川眞吾,福田淳,四至本アイ

内田勝編集長時代の『週刊少年マガジン』誌上で1966年から1971年まで毎週展開された大伴昌司構成による企画ページの数々は,質量ともに未曾 有の出来事だった。誰も想像しなかったウルトラ怪獣の体内を図解し,誰も体験していない世界の終末や未来の情報社会を解説する,イラストレーションをフル に活用した大図解。まるで対象が誌上に復元されたかのような臨場感を演出する写真ドキュメンタリー。少年誌の枠を飛び越えたビジュアル・ジャーナリズムが そこに現前していた。これはひらめきや感性を肯定する映像文化の幕開けであると同時に,論理が重んじられた活字文化の再検討,再定義でもあった。内田・大 伴コンビの偉業は『週刊少年マガジン』を原体験に持つ世代から再発見された1980年代以降,何度も参照され続けてきたが,本特集は二人の人物像にフォーカスをあてた40年後からの再検証である。

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展覧会と印刷物。
構成・展示写真:立花文穂
文:島袋道浩

芸術や社会における既存の枠組みを解体し,新たな風を呼び込む試みとして,日本を含むアジアの現代作家9組が参加した展覧会「風穴 もうひとつのコ ンセプチュアリズム,アジアから」が,今年の春に国立国際美術館で行われた。その象徴的な存在として,出品作家でもある立花文穂が編集とデザインを手がけ た図録があげられる。形態や構成,考え方が一般的な展覧会図録と異なり,その微妙な差異が参加作家たちの視点のズレとシンクロすることで,出品作品のひと つのような感覚を覚える。
アート史の文脈におけるコンセプチュアリズムにとって,重要な意味を持ち続けてきた印刷物を,紙や本,印刷をテーマに表現し,グラフィックデザイナーとし ても活動する立花はどのように捉えて参加したのだろう。その問いに対する自身の言葉とともに,風穴展での活動を誌面上に再構成する。

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今田欣一の書体設計 和字と漢字

活字書体設計者の今田欣一は写真植字からデジタルタイプにまたがるその長いキャリアの中で,数々の書体設計にかかわってきた。最近の活動の多くは, 長い歴史に培われた写本,刊本,金属活字書体の復刻である。その根底にあるのは現代のタイポグラフィが漢字書体,和字書体,欧字書体が三位一体となってよ きハーモニーを奏でなくてはならない,という信念である。
本企画は,今田の書体開発の中核をなすこの復刻プロジェクトの設計思想,制作手法についての講演会をもとに再構成したものである。先人が残した書物をたどり,真摯に再生するその試みは,日本におけるタイポグラフィのひとつの理想へと向かう挑戦的かつ確信的な実践である。

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イベントレポート「タイポジャンチ 2011:ソウル国際タイポグラフィ・ビエンナーレ」
文:山本太郎

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