IDEA magazine339
2010/03
ぼくらのデザイン,みんなのデザイン


特集:ぼくらのデザイン,みんなのデザイン
杉田遥,東京ピストル,橋詰宗,原田祐馬(UMA / design farm,井口弘史,千原航,佐々木暁,針谷建二郎(ANSWR,川上俊(artless,中野豪雄,須山悠里,SKKY / iTohen,セミトランスペアレント・デザイン,河野未彩,グラファーズロック,迫田容満(1057)

表紙アートワーク:大原大次郎

杉田遥

イラストレーター,デザイナーの杉田遥は,現代日本文化の土壌のなかから自生したあいまいでフラジャイルな,しかし確かなひとつの「絵」をつかみだ す。イラストレーション,グラフィック,少女カルチャー,アニメ・カルチャーなどの諸文脈の対立や引用を越えた,いまここの「いとをかし」イメージング。

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東京ピストル

エディトリアルやアイデンティティ・デザインなどのクライアントワークにとどまらず,人文科学的領域に踏み込んだプロジェクト,地域共同体,環境問 題やDIY に関するプロダクト,ハプニング性のあるイベントを開催するなど,編集とデザインの技法を駆使して様々な活動を展開するデザイン集団,東京ピストル。その 運動と場の発生力をみる。

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橋詰宗

イギリスで学んだ「日常的実践」という思想は,形を作る以前にものの仕組みを理解し,人とのつながりを作る大切さを教えてくれたと語る橋詰宗。本をはじめ,ウェブやワークショップなど,領域を超えてデザインの新たな役割を見いだしている。

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原田祐馬

展覧会の展示構成・図録制作,グラフィック・空間デザイン,自身のブックレーベルなど,さまざまな領域を横断してデザインを展開する原田祐馬。昨年 は,自身の拠点である大阪を”創 造都市”へとデザインするプロジェクト「DESIGNEAST」を始動し,人との交流を含めた新たなデザイン領域へと活動の幅を広げている。

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井口弘史

「ひとつのありかたとして,芹沢銈介には憧れますね。これまでサブカルチャーやファッションの 領域を中心にグラフィック制作やデザインを行ってきた井口だが,目指す作家や作品は何かという問いに,型絵染で知られる工芸家の名を答えた。その本意と は? イラストレーションや記号,アート,ファッションの制度的な重力を離れ,ヴィジュアルランゲージの意味構造を操る,グラフィック詩人のポエトリー。

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千原航

学生時代,立花ハジメと朗文堂というまったくベクトルの違う二者に同時に出会ったことにより,千原はデザインやタイポグラフィの幅の広さと深さに気 づく。音楽やサブカルチャー周辺で仕事を続けつつデザインの状況への批評的認識を持ち続ける千原は近年,DIY的な参加型イベントやレクチャーを積極的に 主宰し,デザインに運動性をもたらそうと企てる。

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佐々木暁

文芸,評論,サブカルチャー,音楽関連のブックデザイン,オルタナティブなレーベルのCDジャケットを数多く手がける佐々木暁。佐々木が日々の営みのなかで思う人の生と物事とデザインのあり方。

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針谷建二郎

デザインへの参入障壁が技術的には低く,仕事的には高くなったゼロ年代以降の状況で,デザイナーとしてのヴィジョンを具現化しつつ活動するために は? 針谷健二郎は自らイベントを引き起こす事で平坦なフィールドからの「跳躍」を試み,ネットや現場を問わず人々が参与できる場を連環させながら,一元 的な価値観にとらわれない運動体で
あり続けている。

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川上俊

川上俊が生み出すアートワークやデザインは,大胆に日本的な要素を取り入れながら,適度な距離感が保たれ,独特の美意識が感じられる。アートとデザイン領域を自在に行き交う彼の活動は,自身の感性と時代の流れに従い,有機的な展開を見せている。

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中野豪雄

紙メディアであることの意味や価値をとことんまで突き詰め,”エディット”という視点で本の構造から組立てていく中野豪雄。細部にまで手が尽くされた彼のブックデザインに,本の真価を探求しようとする確固たる姿勢が現れている。

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須山悠里

自身のレーベルから本を出版することで,読者にいかに届けるかということもデザインだと気づいたという須山悠里。本と読者の関係性を含めて印刷物のあり方を模索しながら,既成概念にとらわれない独自の活動を続けている。

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SKKY

SKKYは大阪を拠点にしたデザイン事務所であると同時に,代表の鰺坂兼充いわく「勝手にはじめた公民館」として,併設したギャラリーiTohen を通じて周囲のコミュニティに自然と開かれた活動を行っている。また,展示と合わせてデザインされるDMやフライヤーも,その新鮮なグラフィックで多くの 人の注目を集めている。

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セミトランスペアレント・デザイン

ネットや電子情報機器が生活に浸透した現在,それらを印刷物や映像と同じ目線でデザインプロジェクトの一部に組み込むのはごく自然な行為となった。 ひとつの「アイデア」を,何を使ってどう実現するか,それだけが問題だ。先端技術によるスペクタクルと透明化した(トランスペアレント)な情報インフラの あいだで,DIY的な想像力にかける。

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河野未彩

プロダクトデザインにおける手描きのレンダリングの手法。戦後のリアルイラストレーションが見つけ出した超越的リアリズムとポップさ。手描きしか無 かったアナログ時代の魔術光学だけが醸し出せたリアリズムを,河野は自らの想像力のミクスチャーに取り込みながら,プリズムのようにきらめくイメージ体へ と昇華させる。

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グラファーズロック

GraphersRockは80,90年代のポップやテクノの美学やSFカルチャーを継承しながら,ネット音楽レーベルへのヴィジュアルの提供やジンの発行,オリジナルプロダクトの制作など積極的に活動している。当時よりはるかに拡張された情報装置や処理能力のもと
GraphersRockが解釈, 統合するテクノとSFのイマジネーションはフェティッシュな駆動を続ける。

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迫田容満

情報機器を駆り,ネットワークの海に遊ぶ世代が拡張した視覚と触覚は,あらゆるソースを解体し,再構築する。彼らにとってデザインは学ばれるもので はなく,世界認識の過程のなかで獲得されるものとなっている。この世界で人はデザイナー「になる」のでなく,デザイナー「としてある。電子情報のアーキテクチャを出し抜き,迫田容満はその剣呑さとナイーブさをあわせた放埒なヴィジュアルを発表し続けている。

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00/10アンケート企画:ゼロ年代のデザインを俯瞰する
(デザイン:天野昌樹)

2000年代,政治,社会,メディアの構造が大きく変化した。そのときデザインに何が起こったのか。そこで弊誌では,身近な雑感から印象的だった出来事について,さまざまな世代のデザイナーにコメントを寄せていただいた。
これをもって21 世紀最初の10 年を点描し,迎えたばかりの2010年代の道しるべとしたい。

秋田寛,秋山伸,植原亮輔,葛西薫,勝井三雄,加藤賢策,菊地敦己,草野剛,坂野公一,佐々木暁,澤田泰廣,澤地真由美,白井敬尚,鈴木一誌,立花 文穂,戸田ツトム,中垣信夫,中島英樹,永原康史,中村至男,服部一成,原研哉,平野湟太郎,町口覚,松下計,松田行正,三木健,水野学,山口信博
ホジェーリオ・ドゥアルチ
ブラジルの創生主/のけ者
構成・文:ワレン・タイラー,ジェームス・ヒバード

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Heft, Gravy, and Swing オズワルド・クーパー その生涯と時代
文:イアン・ライナム

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新連載:越境のかたち
第1回 秋山伸
構成・デザイン:戸塚泰雄

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2000年代雑誌ガイド――日本の場合
構成・文:ばるぼら
デザイン:橋詰宗

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