IDEA magazine378
2017/7
グラフィックの食卓

IDEA No.378
Published: 2017/7
Price: 定価3,111円/2,829+tax jp yen
「order」のリンクより(株)誠文堂新光社サイトのオンラインショッピングをご利用いただけます。送料やお支払いについての詳しい情報は、同サイトの案内に従ってください。




本特集「グラフィックの食卓」 は,近代グラフィックデザインの文脈にある,食についての,あるいは食を足がかりにした批評的グラフィック作品をアラカルト的に紹介するものだ。
近年,グローバル化とともに(美食ではなく)文化としての食への関心が高まり,料理の世界では工学的に料理を捉える発想が深まっている。またその一方で,アートやデザインの領域でも,食を概念装置としたプロジェクトやワークショップ,印刷物が興隆している。これらの同時代的動向はそれぞれ独立した物では無く,高山宏の鮮やかなテーブル近代文化論が示したように「table」 が「板」 から「卓」そして「図表」 となって電子的卓文化(tabletop,desktop,tablet) が生まれていく,近代の精神史でつながっているように思われるのだ。そして,デザインと食が食卓(テーブル) を媒介にして,互いにアナロジカルに(類比的に) つながっているグラフィックに,その構造を読み解く秘密があるのではないだろうか。
本特集は文化的活動とグラフィックデザインの実践のつながりに深い関心を寄せてきたデザイナー,研究者であるワレン・テイラーとの協働のもとで構想・制作された。本特集を秩序立てるテーブルは,彼の関心と私の関心,二つの焦点による楕円を描いている。非西洋圏の事例については機をあらためたいものの,本特集が正円による合理的世界観ではなく,楕円が象徴する動的で相補的な世界へ開く窓となっていれば幸いである。

企画・構成:ワレン・テイラー,アイデア編集部
文:ワレン・テイラー,野見山桜,イェンス・ミューラー,室賀清徳
翻訳:熱海綾乃,奥田由意,テランス・ヤング,中澤理沙
デザイン:加藤賢策,北岡誠吾(LABORATORIES)

【目次】

1 F. T. マリネッティと 『未来派料理の手引き』

2 レス・メイソンと『エピキュリアン』

3 勝井三雄と『奥様手帖』

4 ジャンニ・サッシと『ラ・ゴーラ』

5 ハーマンミラーのピクニック・ポスター

6 イケアの『Homemade is Best』

7 フード・カルチャー・マガジン

8 カール・ゲルストナーと『アヴァンギャルド・キッチン』

9 トラットリアの日々:食べることのソーシャライズ

【寄稿者略歴】

ワレン・テイラー Warren Taylor
ワレン・テイラーはオーストラリア,メルボルンを拠点とするMADA(モナシュ芸術デザイン建築大学)のコミュニケーションデザイン科講師であり,アートとデザインの収斂に関心を向けたキュレーションプロジェクト「The Narrows」の創設者でもある。2006年から2011年のあいだThe Narrowsでロナルド・クライン,エクスペリメンタル・ジェットセット,ジョン・メリン,ホジェリオ・ドゥアルテ,ピーター・ブロッツマン,レス・メイソン,カレル・マルテンスといった重要なグラフィックデザイナーの展覧会を行った。ワレンはまた,オーストラリアのアーティストのための印刷物やポスターを数多く手がけている。現在,モナシュ大学のキュレーション学博士課程に在籍中。

ドミニク・ホフステード Dominic Hofstede
ドミニク・ホフステードはグラフィックデザインの実践,執筆,調査,教育について多彩な活動を行ってきた。メルボルンを拠点とするそのデザイン事務所ホフステッド・デザイン(2016-2015)はタイポグラフィの知識と技術で高く評価された。2009年,彼はオーストラリアにおける1960年から1990年までのグラフィックデザイン・アーカイブ「Re:collection」を設立。また2014年には,モナシュ芸術デザイン建築大学の非常勤シニアリサーチ・フェローに就任した。現在はメルボルンのMAUDにてデザインディレクターとして活動している。

野見山桜 Sakura Nomiyama
2016年,ニューヨークのパーソンズ・スクール・オブ・デザインにてデザイン史の修士号を取得。デザインの研究者として展覧会の企画や書籍・雑誌への寄稿を行う。現在,クーパーヒューイット・スミソニアン・デザインミュージアムの素描・版画・グラフィックデザイン課フェローとして,日本のポスターコレクションの調査研究に従事する。

イェンス・ミューラー Jens Müller
1982年ドイツ,コブレンツに生まれ,グラフィックデザインを学ぶ。デュッセルドルフのデザイン事務所optikのクリエイティブディレクターとして活動し,ドイツ国内をはじめ国際的なデザイン賞を多数受賞。グラフィックデザインの研究,調査,執筆も行い,おもな編著にグラフィックデザイン史叢書「A5シリーズ」や『ロゴ・モダニズム』がある。ドルムント応用科学大学デザイン科臨時教授。


CHAMP MAGAZINE特別編集 イサマヤ・フレンチ ビューティ・エグゼクティブ
文・デザイン:ジョアンナ・カウェキー(Champ Creative)
インタビュー:モニカ・カウェキー(Champ Creative)
訳:王夏美

イサマヤ・フレンチは現在数多くのビジュアル誌や世界中のイベントに参加し,アート,メイク,美容の常識を超えた表現によって注目を集めるメイクアップアーティストだ。そんな彼女は近年「食べられるコスメ」をテーマにした新しいスタイルのパフォーマンス表現に取り組んでいる。本誌では,特集「グラフィックの食卓」と連動して,メイクアップという身体的なグラフィック表現と食により新たな表現と感覚を生み出すイサマヤの活動を,イギリスと日本を拠点とする雑誌『CHAMP』のクリエイティブチームの協力のもと紹介する。


[新連載]アトラス考─生態学的世界観の視覚化
第1回 オットー・ノイラートと『社会と経済』アトラス
文:大田暁雄

近年,情報整理の一手段としてインフォグラフィックスへの関心が高まるなか,その基盤を作った人として知られるオットー・ノイラートの統計図表が引き合いに出される機会は増した。しかし,それらは単純に情報を見やすく,わかりやすく伝えるためだけに生まれたものではなく,見る者が自らの社会を把握し,世界観の形成を促すものとして,教育的観点や思想に基づき考案されたものであった。そして,その発端には,歴史上作られてきた「主題地図」(何らかの情報を地理的関係性に結びつけて図解化するもの)の存在があった。本連載では主題地図を中心とした「アトラス=地図帳」をもとに,人類の歴史の中でいかに視覚的な表現が人間の世界像を形作ってきたのか,そのためにいかなる視覚化技術が考案され,世界像が描かれたのかに迫る。


[連載]場所のない言葉│Language Without Place
第3回 第二のことが第一に
文:スコット・ジョセフ
訳:山本貴光


[連載]写真と画像の分水嶺
第2回 加納俊輔─写真の写実
文:大山光平


[対談]鈴木一誌×水野祐
ポストインターネット時代の法とデザイン ―知恵蔵裁判からクリエイティブコモンズまで
構成・デザイン:長田年伸


新書体
インフォメーション
ブック
展覧会:「ナルゲ。PaTI」展