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Published: 2025/9/10
Price: 定価3,630円/3,300+tax jp yen
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【特集】
書のかたち,文字のデザイン
アラビア書道とタイポグラフィから読みとく造形文化
企画・構成:アイデア編集部
デザイン:LABORATORIES(加藤賢策,鎌田紗栄,小泉桜)
アラビア文字は,精神性と造形性を兼ね備えた文字体系として,約1400年にわたりイスラーム世界の文化と信仰を支えてきた。もともと口承で伝えられていた聖典クルアーンを,その理念の崇高さにふさわしい視覚表現へと昇華する営みのなかで,アラビア書道は発展を遂げた。偶像の使用が制限される文化的背景のもと,文字そのものが意味と美を兼ね備える視覚表現として尊重され,とりわけモスクやマドラサといった宗教建築では,幾何学文様や植物文様と並び,壁面やドームを彩る装飾として空間に精神的な深みと象徴性を与えてきた。
しかし,この文字体系は,連綿とつながる筆画や複雑な字形の変化ゆえに印刷への適応が難しく,活版化はヨーロッパ諸言語に比べて遅れた。ムスリムによる本格的な活版印刷が始まったのは18世紀であり,カリグラフィの美を損なわずに機械的な複製を可能にするという大きな課題を伴っていたのである。
今日では,こうした制約を超えて,伝統と革新を横断する多彩な試みが生まれている。古典の精神を現代的に再解釈する書家や,デジタル環境におけるフォント設計やレイアウトを探究するデザイナーなど,いずれも線の伸びやかさやリズム,字間や余白の美を保ちながら,ポスターやロゴタイプ,ブックデザインなど現代の視覚文化へと書の遺産を受け継いでいる。
本特集では,アラビア書道の源流と美学をたどる第1章「カリグラフィ」と,近代以降の活字化と現代的展開を探る第2章「タイポグラフィ」の2部構成で,この文字が築いてきた造形文化の系譜を描き出す。宗教的背景から生まれた書の文化が,いかにして時代と技術を越えて生き続けているのかを考えながら,文字の「かたち」と「意味」をあらためて見つめたい。
Chapter 01 カリグラフィ──書の伝統と精神
アラビア文字とアラビア書道
文:相島葉月
アラビア文字・形と音の手引き
監修:林 則仁
書物・工芸品・建築にみるアラビア文字
文:林 則仁
写本
工芸品
建築
アラビア書道の現在
ハサン・マスウーディー
ウィッサム・シャウカット
ハジ・ヌール・ディーン
Chapter 02 タイポグラフィ──現代に息づく書のかたち
アラビア文字のタイポグラフィ
文:大曲都市
タイプデザイナーの実践
マムーン・サッカル
クリスチャン・サーキス
パスカル・ゾグビ
タイポグラフィックデザイン──ターレク・アトリッシの仕事
[寄稿]
イスラーム空間における文字と装飾
文:深見奈緒子
東洋と西洋の狭間──イスラーム美術とアラビア文字
文:小林一枝
沈黙の書体──アラブ・グラフィックデザインと可視化の駆け引き
文:ハイサム・ナワール
[選書]
アラビア文字・関連書籍案内
文:大曲都市
[連載]
デザイン蒐集家たちの部屋
第11回:デザインアーカイヴ「The Design Reviewed」part 3
East meets West & West meets East ──和本の美しさに魅せられて
文:中島悠子 デザイン:山田和寛+竹尾天輝子(nipponia)
翻訳:株式会社フレーズクレーズ
[レビュー]
Art Book Osaka
文・デザイン:ブラザトン・ダンカン
受け継ぐことのよろこび
《ギャビー・バザン デザインのアトリエ 活版印刷
Gaby Bazin – Le Typographe》
文・デザイン:長田年伸
協力・写真提供:市谷の杜 本と活字館
アン・サンス個展「Hollyeora(Be Spellbound)」
文:西まどか デザイン:中山詳子
スウェーデン国立美術館
素描コレクション展──ルネサンスからバロックまで
文:アイデア編集部 デザイン:中山詳子
160 第27回亀倉雄策賞・JAGDA新人賞2025・JAGDA賞2025決定
INFORMATION
BOOK
本誌411号におきまして,
p.164 informationの展示「The identity of the Conqueror」(竹尾 青山見本帖)のクレジット表記に誤りがございましたので,以下に訂正いたします。
誤)
主催:株式会社竹尾,嘉瑞工房 髙岡昌生
協力:株式会社ヤマト
正)
主催:株式会社竹尾
協力:株式会社ヤマト,嘉瑞工房 髙岡昌生
関係者ならびに読者の皆様にご迷惑をおかけいたしましたことを,ここに深くお詫びいたします。