IDEA magazine412
2025/12/10
有馬トモユキ ―関係から生まれるデザイン

Published: 2025/12/10
Price: 定価3,960円/3,600+tax jp yen

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【特集】
有馬トモユキ
―関係から生まれるデザイン

企画・構成:長田年伸,アイデア編集部
デザイン:LABORATORIES(加藤賢策,鎌田紗栄,小泉桜)
撮影:Gottingham 翻訳:ブラザトン・ダンカン

これまでも技術環境の変化はデザインとデザイナーのあり方に大きな影響を与えてきた。かつては専門知識や技術修練を必要としたアプリケーションは,高度な機能を備えながらもより直感的・感覚的に使えるように改良され,教育的出自を問わずだれもがあらゆるグラフィックを実現する状況を生み出している。

一方で,AI技術の是非をめぐる議論に代表されるように,急激にオートメーション化される先進的な技術は,人間の手からその仕事を奪うのではないかとの危惧も広まっている。みなが共通のアプリケーションを使用しその技術的支援を受けることで,結果として似たような出力ばかりが生み出されているのではないか。人間に技術をアジャストさせるのではなく,知らぬ間に人間が技術にアジャストさせられている。もしかしたらこの先にまっているのは,そうしたデザイン(デザイナー)・ディストピアなのかもしれない。

日本デザインセンター「有馬デザイン研究室」の有馬トモユキは,2000年前後からはじまったデジタルイノベーションにリアルタイムで併走してきた人物である。有馬はいわゆる美術大学でデザインの専門教育を受けてきたわけではない。コンピュータを通じてゲームとインターネットに触れ,ウェブで漫画・アニメカルチャーと出会い,音楽によってグラフィックデザインを知り,同人デザインに参加することで人と出会い,出会った人との関わりから自分の仕事の領域を拡張しつづけてきた。ウェブ,書籍,パッケージ,ブランディング,アニメーション,ゲーム,展覧会―技術と人とのかかわりのなかで探求をつづけ,あり合わせの道具としてアプリケーションを駆使してきた。

本特集では有馬トモユキのキャリアを総括する。有馬は技術と人との関係から生まれるデザインをつくりつづけてきた。みずからの職域を職能で規定するのではなく,求めに応じ,あるいは求められていなくとも自身の動機に基づき,プロジェクトごとに自分の仕事の範囲を定める。「ここまでがデザイン」なのではなく,「これもデザイン」であっていい。デザイナーとして,ではなく,デザインができる人間として力を尽くす。そのことがプロジェクトをともにする仲間を触発し,受発注の境界を曖昧にさせ,デザインスタイルを超えて,「有馬トモユキのデザイン」を成立させている。

有馬の仕事を振り返ることは,現代における技術とデザインの関係を問い直すとともに,デザインが「人間の仕事」であるために,そこにかならず介在する「人」という要素に目を向けることにもつながる。それは来るべき2030年代のデザイナーたちにとってひとつの指針を示すものになるはずだ。本特集がデザインを目指すすべての人の背中を後押しするものとなることを願う。


PART 1  1985–2008 THE ORIGIN

PART 2  2009–2015 THE GROWTH

[寄稿]
デザインの内と外―有馬トモユキと『アルドノア・ゼロ』

文:黒﨑静佳

[寄稿]
「エロゲー」を遙かに超えて

文:下倉バイオ

PART 3  2016–2025 THE BLOOMING

[寄稿]
“I’m here.” “I’m glad you’re there.” 
文:瀬島卓也

[寄稿]
有馬トモユキのデザイン:コンピューティングとコンテンツの狭間から

文:室賀清徳


[小特集]
AIと共創しデザインするには?

永原康史,伊勢尚生,スコット・アレン,徳井直生
デザイン:永原康史

[レポート]
“ネオン化”の時代をめぐって─ポーランド・グラフィックデザインのもうひとつの系譜

取材:野口真弥(アイデア編集部) 
デザイン:牧寿次郎
画像:イロナ・カルヴィンスカ,パトリク・ヴィシニェフスキ

[周年企画]
20 Years of Hudson-Powell

編集:ペンタグラム,アイデア編集部
寄稿:マイケル・ビェルート
聞き手:アイデア編集部
デザイン:ステファン・ファン・レイン,ルーク・パウエル,ジョディ・ハドソン・パウエル(ペンタグラム)
翻訳:株式会社フレーズクレーズ

[連載]
デザイン蒐集家たちの部屋

第12回:デザインアーカイヴ「The Design Reviewed」part 4
East meets West & West meets East ──和本の美しさに魅せられて
文:中島悠子
デザイン:山田和寛+竹尾天輝子(nipponia)

翻訳:株式会社フレーズクレーズ

書体開発の未来 Monotypeの日本ローカライズをめぐって
文・デザイン:長田年伸 協力:Monotype K. K.

[展覧会レビュー]
デザインとプロパガンダ《井上有一の書と戦後グラフィックデザイン 1970s-1980s》
文・デザイン:長田年伸

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