IDEA magazine410
2025/6/10
「こわい」をかたちにする ―恐れと不穏を視覚化するブックデザイン

Published: 2025/6/10
Price: 定価3,630円/3,300+tax jp yen

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【特集】
「こわい」をかたちにする ―恐れと不穏を視覚化するブックデザイン

企画・構成:アイデア編集部
デザイン:LABORATORIES(加藤賢策,鎌田紗栄,小泉桜)
撮影:青栁敏史

「こわい」とは何か。それは恐怖,不安,嫌悪,驚き,あるいは不条理や理不尽といった感情の総体であり,ときに人の心を深く揺さぶる力をもつ。今号では,そうした「こわさ」の感覚がどのように視覚化され,本というメディアの表層,すなわち「装丁」や「表紙」に,いかに表現されているかを探る。

こわさを扱う各メディア―小説の表紙に見る画面構成,絵本における静かで異様な色彩,雑誌が切り取る時代性,そして漫画に滲む可笑しさと気味悪さが同居する違和感。そこに共通するのは,理性では処理しきれない「何か」に触れさせようとする,デザインの手つきだ。それは読者の想像力を引き出し,ときにページをめくる前から感情をざわつかせる。つまり,「こわい本」の視覚表現は,単なる装飾や販促ツールにとどまらず,内容と呼応しながら読者の情動に働きかけるメディア装置として機能しているのだ。

とりわけ現代において,「こわい」という感覚は,従来のホラー的な恐怖表現にとどまらず,より複雑で多層的な意味を帯びはじめている。例えば,不気味なものがもたらす不安,言語化できない不穏,あるいは社会的な違和や排除への恐れ。これらはかならずしも血や暴力に頼らずとも,「視覚的な演出」によって強く印象づけられる。むしろ近年では,「見えない怖さ」をいかに表現するかという点に,デザインの新たな挑戦があるのではないか。

本特集では,小説・絵本・漫画・雑誌という4つのジャンルを通して,「こわさ」のヴィジュアル表現に迫る。また,「こわさ」の表現者として活躍する,デザイナー・坂野公一(welle design),漫画家・伊藤潤二,ゲームクリエイター・Chilla’s Art,イラストレーター・fracoco諸氏へのインタビューも掲載。アンソロジスト・文芸評論家の東雅夫氏にも寄稿をお願いした。

本特集を通じて,「こわい」という感覚の多様さと,それが今,どのように造形されているのかを見つめ直したい。そして,視覚表現としての「こわさ」が,どのように深くわたしたちの感情や記憶と結びついているかを,あらためて問い直す機会になればと願っている。


[小説]

 

[漫画]

 

[絵本]

 

[雑誌]

 

[寄稿]
「 かみの毛のながいひと」考 ―幽霊と視覚文化の系譜
文:東雅夫

 

[インタビュー]
怖くならないように「妥当なこわさ」をデザインする
坂野公一(welle design) 
聞き手:アイデア編集部 構成:藤田亮一 撮影:平井伸造

 

誰も見たことがないホラー表現を ―伊藤潤二の“増殖”する恐怖
伊藤潤二
聞き手・構成:高畠正人 撮影:恩田拓治

 

インディーホラーゲーム界を席巻する兄弟ユニット
Chilla’s Artがつくり出す「こわさ」とは
Chilla’s Art
聞き手・構成:松田孝宏

 

不穏な気配とこわさの視覚表現  ―日常に潜む違和感を捉える眼差し
fracoco
聞き手:アイデア編集部


 

[小特集]
カンヌ国際映画祭 ACID部門のポスターデザイン
協力:ACID Cannes デザイン:寺尾功司 翻訳:株式会社フレーズクレーズ 

 

「世界で最も美しい本」コンクール2025レポート
厳格さと親密さ─静かな「本の海」にダイブした話 
文・構成:秋山伸 編集:西まどか
デザイン:角田奈央(neucitora)

 

[連載]デザイン蒐集家たちの部屋
第10回:デザインアーカイヴ「The Design Reviewed」part 2
East meets West & West meets East ―和本の美しさに魅せられて
文:中島悠子  デザイン:山田和寛+竹尾天輝子(nipponia)
翻訳:寺田知加(フレーズクレーズ)

 

[展覧会レビュー]
黒の芸術 グーテンベルクとドイツ出版印刷文化
文・デザイン:長田年伸

 

ブックデザインとコンセプト
《書藝問道 ブックデザイナー 呂敬人の軌跡》をめぐって
インタビュー:水戸部功 聞き手・構成・デザイン:長田年伸